またやってしまった。
加藤シゲアキさんの作品を買うといつも後悔する。
いや、買うと、というより買って読むと、かな。
ゆっくりじっくり味わいながら読みたいのにあれよあれよという間に最終ページに辿り着いてしまう。
もっとゆっくり読みたいのに、あまりにも面白過ぎてどんどん読み進めてしまう。
今回も、発売日の2日前に買った作品を1日足らずで読了し、発売日の朝にはもう感想が書ける状態になっている。
発売日なのでさすがに書かないけど。
1800円があっという間に脳内に浸透してしまう。
世界一贅沢な後悔だなあといつも思う。
…はてブロのテンションで書き進めにくいのでいつもの文体に戻します。
いや、本当に面白くてすごい。怖い。
加藤作品もこれで6作、7冊目。エッセイとアンソロジーも入れるともう9作の著書が世に放たれているわけですね…。
まさかこんなに続くとは…と作家デビュー発表当初の私が一番びっくりしてる。
当時はピングレの1冊で終わると思ってた。
とにかく「作家」という肩書があればいいんだと思ってた。
ダイビングを楽しむためだけにとるダイビング資格とか、1度だけ行ってみたかったハワイに行くためだけのESTA*1とかそういう感覚なのだと勘違いしていた。いや、もしかしたら書き始めた当初は本人もそう思っていたかもしれない。
だって吐いて捨てるほどいるじゃない。そういう著名人。いいんです。書くことが本業じゃないんだから。「書くことも出来るんですよ」ってことが世に浸透すれば充分だと私は思うのです。書かなくたって芸能界の一端を担えている人たちだから。
でも、今日、彼の9作目が書店に並んでいる。売り切れているという話も聞くくらい、飛ぶように売れている。
なんだかその事実が、9年前の私も、加藤成亮も加藤シゲアキも救ってくれているような気がして、どうしようもなくうれしい。
冒頭にも書いたけれど、私にとって加藤作品は本当に読みやすい。あくまで「私にとって」だけど。
文体は決してラフなものではないのに目まぐるしく変わっていく展開が面白くて、ゆっくり読みたくてもページを捲る手が止まらない。「次は何て言うんだろう?」「このあとどんな展開になるんだろう?」好奇心が止まらなくて、つい時間を忘れてしまう。
彼がアイドルじゃなかったら、私の自担グループじゃなかったら、この感動はもう少しバイアスがかからず伝わるんだろうか…。
そんな悔しさを感じてしまうほどに、本当に彼の作品は面白い。
いくら作家とは言えども、自分が全く経験していないことを物語に載せるのは難しい、と思っている。
逆に自分の専門知識はどこまでも広げやすい。
だから銀行員だった池井戸先生は銀行関連の作品が本当に面白くてヒットしているし、美術館勤務経験のある原田マハ先生は美術関連の作品を多く執筆している。
アイドルの加藤シゲアキ先生の専売は…?と考えた時に「いろいろな経験」とふわっとした概念が浮かんだ。
作家としての取材をしなくてもバラエティー番組を持つ彼には次から次へと面白い情報が入ってくる。生活そのものが取材みたいなものだから、そりゃあ知識だって多岐にわたってしまう。渡らざるをえない。(って日本語もなんだか可笑しいけど。)
その膨大な情報から、一つ一つの刺激から、彼は丁寧に好奇心を広げていく。気になったものをそっと手に取って、その周りのものを救いあげるように丁寧に丁寧に掘り下げていく。その探求心と好奇心と情熱が、アイドル加藤シゲアキを小説家加藤シゲアキにしているんじゃないかと思うくらい。
作家さんがどうして「先生」と呼ばれるのか。ずっと疑問に思っていたけど考えたことはなかった。これを機に調べてみた。
諸説あるものの、弟子が「先生」と呼んでいたことが外部の人間からもそう呼ばれるようになったのが始まりだというのが有力らしい。
私は「学校の先生のように博識だから」じゃないかなあ、と思う。
小説のためにテーマに沿った参考文献を沢山読む。小説の末尾に<参考文献>として載せられる参考書や論文はせいぜい5冊くらいでも、きっと吸収する知識はその何十倍もあるんだろうなあ、と容易に想像がつく。
専門家の出てくる小説の生みの親はそれ以上に専門家にならないといけないんだよなあ、と最近色んな小説を読んで感じる。
だから「先生」なんだろうなあ。
そういう意味では私はシゲちゃんのことを安心して「先生」と呼べる。
そういえば、一度はNEWSと距離を置いた私が彼らと再会したきっかけは「チュベローズで待ってる」だった。
偶然つけたテレビに出ていたNEWSの紹介VTRで「二週連続発売の長編小説」と紹介されていた。FNS歌謡祭だったと思う。
「久々に読んでみるか」と何の気なしに手に取ったSF小説があまりにも面白くて、読書という習慣自体から遠ざかっていたのに一気に引き込まれてしまった。
もう興味が湧くことはないと思ってたけど、なんだ、こんなに面白い小説が出てるんだ…。そんな衝撃を受けたのを今でもはっきりと覚えている。まあ、「NEWS担」に戻るのはもう少し後なんだけど。笑
チュベローズが唯一私が「一般人」として「一般人」の感覚で読んだ作品だった。
面白かった。ほんとうに。
アイドル活動に興味がなくて「NEWSのファン」にはならないまでも、彼の小説のファンという人はきっと沢山いる。想像以上に沢山いる。
「作家・加藤シゲアキを通じてNEWSを知ってもらえたら」と言っていた彼の願いは、思ったよりも色んなところで叶っているんじゃないだろうか。
小説新潮初の重版、小説化に向けた連載、新潮社のシャッターや特設HPなどの力の入ったプロモーション、そして売り切れ。
彼を取り巻く世界が優しく温かいものだと感じるたびにそんなことを思い返したりしていた。
改めて、加藤シゲアキ先生、「オルタネート」の発売おめでとうございます。
これからもきっと増え続けていくであろう作品を楽しみに待っています。
きっと執筆者として泣きたくなるくらいすぐに読んでしまうけど。
だって面白いんだもん。