早速お題お借りしました。全曲レビューの前に1曲だけ深く語りたい曲があったので取り急ぎ。
3/4に発売されたNEWSのアルバム「STORY」で、とある曲が物議を醸している。
トラック14に収録された曲「君の言葉に笑みを」がバチバチにファンの声を使ってる。
この曲を受け入れられないファンが続出してTwitterがものすごいことになった。少なくとも私のTLはすごいことになってた。
正直なところめちゃくちゃびっくりした。
こう書くと私がこの曲をめちゃくちゃ評価してるように見えるけど、5段階評価、「好き」「どちらかと言えば好き」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば嫌い」「嫌い」で選ぶとしたら、
「どちらとも言えない」になる。
そしてこの記事はこの5段階評価のどれを選んだ人のことも否定したくないと思いながら書いていく。もし語弊があったらごめんね。
肯定したいところ
企画としては面白い
正直とんでもない企画だなって思った。音声ファイルを募集したあたりからアルバムに使われるであろう想像はしてたけど、あんなにしっかりはっきり使われていたのは結構びっくりした。でもマイナスな感想は抱かなくて、単純に「なんて面白いことするんだ…!!」って思った。きっと私が知らないだけで他のアーティストでも似たような企画はしてるんだろうけど、中堅ジャニーズという超安定売れ線ヒット出しまくり安定を求めていそうポジションにいる彼らの規模でこんな曲を作ってしまうことに驚いた。
こういう企画って、きっと一筋縄でしかいかないことの方が多くて、ただ応募された作品を聞き分けるだけでも膨大な時間がかかると思う。
一人分のデータが5秒、2.5万件の応募があったので単純計算して合計125000秒。
休憩なしで聞いても34時間は超える計算。
それをカテゴリ分別して、曲に使うものと特典映像のラジオで使うものに分けて…
と、素人の私がシンプルに考えても気が遠くなる作業だ。
それでもNEWSの制作陣はやった。「やりたい」と思ってくれた。ファンのために、というよりも自分たちの作品のために、だと思う。
いや、「ファンを思う自分たちを表現するために」と書くのが1番誤解がないかもしれない。
その途方もない熱量は絶対に無下にしないでほしいとは思っている。
「サンプル」じゃダメだった
この曲のイメージをただ作りたいだけならこんなにまわりくどい企画は打たなくてよかったと思う。
老若男女がそれぞれに夢を語って希望溢れる未来に向かってNEWSが歌い出す…。
そんなのサンプルの音声でいくらでも再現できる。
専門の役者さんや声優さんにお願いしたほうがもっともっといいクオリティーの音声が録れる。現にそういうサンプルを使っている曲は死ぬほどある。
でも、それじゃダメだった。
「NEWSのファン」の「現実の声」じゃないと何の意味もなかった。
前項でも書いた通り、企画を立ち上げてから曲になるまで、とんでもないコストと時間と手間がかかっている。
NEWSが微笑みかけたいのは綺麗事のような夢でも曲に乗せやすい単語でもなく、
「NEWSと共に生きる君の言葉」だから。
曲の方向性
少しだけ、私の話をさせてほしい。NEWSをほったらかして浮気をしている頃好きになったバンドの一つに*1HEY-SMITHというバンドがある。
彼らの曲に「I HATE NUKUS」という曲がある。
わっかりやすい反原発の曲。曲調は明るくて好きだけど、どうしても「反原発」という政治的要素があるので他人に紹介しづらい。
曲の冒頭で男性が子供たちに「君の将来の夢は?」と聞く。
「野球選手になること!」「きれいな人と結婚したい!」「役者になりたい!」と口々に答える子供たち。
最後に子供たちが口をそろえてこう言う「だから、原発は嫌い!」
前編英語の歌詞なので直訳するとより生々しさが際立つけれど、バンドはこれでいいと思っている。それこそがバンドの意思、ひいては存在意義だから。
子供たちの未来のために、危険な原発は廃止しましょう。というのがこの曲のメッセージ。
この曲の存在を知っていた私は「君の言葉に…」を初めて聞いた時、「平和だ」とひたすらに思った。
「こうすべき」とか「こうあるべき」とか、そういう押しつけがましさが一切ない。
見える風景は「原発反対!」のプラカードではなくて口々に夢を語る私たちを優しく眺めるNEWSメンバーの姿だった。
悪くいえばこれは「平和主義のきれいごとを並べただけの歌詞」とも言えるけど、本当に疲れてふと一息つきたくなった時、こういう結論のないふんわりした曲はなによりも自分自身に寄り添ってくれると思っている。
きっとしんどい時に思い出すんだろうな。
あなたの夢は、なんですか?
この企画に参加するしないに関わらず、応募要項を見た時に誰もが「自分の夢」を意識したんじゃないかな、と思う。(もちろん応募当初は見向きもしなかったけど、今改めて完成された作品を聞いて、でもいい。)
「人に語れるほどの夢はないな」でもいい。とにかく、自分の夢を意識したかどうかだ。
私はした。めちゃくちゃした。
私に語れるほどの夢はなかった。
それでもNEWSと叶えたい夢はあったので、それを応募した。「NEWSの5大ドームツアーに行くこと」*2「NEWSの世界ツアーに参戦すること」
今日聞き返すまで1ミリも思い出せなかったけど、当時の私はそんなことを夢に描いていた。
この企画がなかったら、私が自分の夢を意識することはあったんだろうかと思う。
恐らくないだろう。学生じゃないから就きたい職業の話をすることはないし、友達と会っても話題は仕事の愚痴や恋人との日々。(私の恋人は祐くんなので…って言うと話題にもしてもらえません。ぴえん。)
夢を語り合うなんて、字面だけで恥ずかしくなってしまう。
今は、色んな夢がある。
希望業界に転職すること、ダイエットを成功させること、海外旅行に行くこと、自分を今よりも好きになっててごちゃんにプロポーズされに行くこと(これはお前さえいなければ叶うんだぞ、コロナ。)
夢も目標もないあの頃とは大きな違いだと思う。
その全部のきっかけがSTORYプロジェクトとは言い切れないけど、少なくともきっかけの一つではあると思ってる。思いたい。
引っかかっているところ
「飽きてしまう」ことの不安
私はNEWSの曲が大好きなのでどんな曲も「肯定派」でいたい。
ただ、この曲で懸念していることがひとつだけある。
それは「飽きてしまうこと」だった。
冒頭、間奏、後奏、色んな所でファンの声が使われている。
あくまで一例、ではあるけれど、その一例を聞き続けていたらセリフ部分に飽きてしまわないかという恐れがある。非常にある。曲自体が好きでもそこに飽きを感じてしまうのは非常に寂しい。最初は「そっかそっか、いい夢だねえ…」と思って聞けても、そのうち「あーもうそれ聞いたよ。分かったよ。」となりそうなのが、なんというか、本当にもったいないなあ、と思う。
カスタマイズ出来たらいいのにね
飽きるなら、声を変えればいいじゃない?と密かに私の中のマリーアントワネットが囁いている。
きっと私の唯一の懸念は「ワンパターン化」を防げれば十分解決されるのだと思う。
例えば、EPCOTIAのマルチアングルのように*3 自分の好きな音声にカスタマイズ出来ればいいのにな…。と漠然と思う。
ただ、そんなことは現実的にとてもじゃないけど出来ない。
ただ、将来の音楽の形として、こんなことが出来たら面白いな、と少しワクワクしてしまう。
そんなことを考えていたら、また別界隈の音楽のことを思い出した。
彼らの名前はandrop。三ツ矢サイダーのCM曲や「家族狩り」の主題歌に起用されているので聞いたことがある人もいるかもしれない。
インディーズの頃から「anew」「note」「door」…というアルバムを出して徐々にファンをざわつかせてきたバンドだ。(察しがいいですね。そう、イニシャルをアルバム名にしているのです。しかもそれを一切ファンに言っていない。クリエイティビティに富んだバンドなので気になる人はぜひチェックしてみて欲しい。)
そんな彼らの作品に「bell」という曲がある。
このPVだけで十分完成されているのだけど、彼らはさらに画期的なアイデアを盛り込んでいる。
(もうだいぶ前の曲なのでさすがにバージョン更新していないのか、私のPCからはプレイできなくなってた)
男性がPVの中で打っていた文章を自分の好きなように作成出来て、それを使って実際にゲームが出来る。
これを聞いた時あまりの衝撃に周りの5人くらいの友達にやらせて回った気がする。(迷惑)
さすがに曲中の音声データをカスタマイズすることは出来ないけど、こういう遊び心があったらもっと純粋に「君の言葉に…」を楽しめたのかもしれない。(ちなみに私とフォロワーさんのイチオシはシゲくんの前髪になりたい女の子と慶ちゃんと結婚したい勢いのすごい女の子です。)
ずいぶん大胆に挫折してしまったけれど、こんなに企画として面白いことをしているのに、ファンサイドに受け入れられない部分があるのは本当にもったいないとだけ、心から思う。
ファンがどうあるべき、ではなくて、どういう作品だったら楽しめたのかな…とぐるぐる毎日考えている。
誤解しないでほしいところ
賛否両論、あっていい。
長々と書いてきたが、冒頭に書いたように「どう感じるのが正解」というものは決してない。それだけは事実だ。
むしろ色んな感じ方があっていい。考えることは自由だ。(なんかぺこぱのツッコミみたいになったな…)
いい作品であればあるほど賛否というものは分かれるし、戦争さえ始まらなければお互いが積極的に発信していいと思っている。
Twitterを見ていると「みんなが肯定派なので、否定意見があって安心しました」とか「私はいい作品だと思ってたので否定派が多くてショックでした」とか、そんなツイートを散見する。確かに仲のいいフォロワーさんと解釈違いを起こすのは寂しいかもしれないけど「ファンだからこう感じるべき」とか「受け入れられないならファンじゃない」とかそんなことは1mmもなくて、NEWSサイドも望んでいないと思う。
私がアーティストだったらライブで怒る。「宗教じゃねーんだぞ」と。
ファン層が広ければ広いほど色んなバックグラウンドがあって、そのある種「人種のるつぼ」を一つの思考でまとめ上げるなんて到底無理だ。ユーゴスラビアか。
STORYプロジェクト自体、3部作で散々世界観作っておいて散々色んな考察を生んでおいて「最終章なので全部回収しまーす!」なんて無理。絶対無理。
だからそれぞれの答えでいい。それぞれの最終章でいい。それもある種の「あなたのSTORY」だから。
ふるいにかけたいわけじゃない
シゲ部でこの曲がオンエアされた時「キラキラした人たちだけが選ばれた」とか「私はNEWSファンとしてターゲットから外れた」とかあまりにも悲しいツイートが流れてきてショックだった。私がシゲちゃんなら鍵外して「そんなつもりないんだけど!」ってリプして回ると思う。(シゲちゃんはTwitterをやっているものとします)(しかも閲覧用の鍵垢。絶対そうでしょ。ねえシゲちゃん聞いてる??)
別に「企画に参加しなかったからファンじゃない」とか「こんなキラキラしたこと言えないから疎外されてる」とかそんなこと絶対にない。
…って書こうとずっと思ってたんだけど、初回特典の映像でちゃんと言ってくれてました。「送ろうとしたけど送れなかった人もいるかもしれない」「言えなかった人もいるかもしれない」って。NEWS本人がちゃんと分かってくれてた。私が言うよりも何十倍も説得力のある言葉をちゃんと置いてくれてた。
「私は見られてない」なんて思わなくていいんだよ。たとえ目が合わなくてもNEWSの視界の中にちゃんとあなたはいるから。応募してようがしてまいが、あなたの声はちゃんと届いているよ。
だって見たでしょ?音声を聞くNEWSの顔。仕事人でもおふざけモードでもなく、ただ愛おしいという顔で音声を聞き続けたNEWSの顔。
(見てない人は一回見てほしい。こんな顔するんだってびっくりするから。)
曲中に使われた声だって、「まっすーとけっこんしたい」女の子だって、「シゲアキくんの前髪になりたい」人だって、「慶ちゃんと結婚したい!!!!!!!」人だって、「手越くんにありがとう」って伝えたい子だって、もちろん私の「NEWS世界ツアー」の夢だって、平等に届いてる。だから「ファンじゃない」なんて言わないで。
NEWSを好きなあなたはちゃんとNEWSに好かれてるから。見てもらえてるから。大丈夫。
1ファンでしかない私がここまで自信を持って言えること自体がおかしいけど、NEWSを見てたら、STORYを聞いてたら、なんとなく分かる。
そういう意味ではNEWSはどこまでも異端児で、邪道で、アブノーマルで、唯一無二で、とてつもなく愛おしい。